巻16−3805 雑歌  作者:娘子


  
項目 内容
原文 烏玉之 黒髪所沾而 沫雪之 零也来座 幾許恋者
訓読 ぬばたまの 黒髪濡れて 沫雪の 降るにや来ます ここだ恋ふれば
仮名 ぬばたまの くろかみぬれて あわゆきの ふるにやきます ここだこふれば
参考

・昔男の人がいた。新たに婚礼をし、時を経ずに駅馬の使いとなって遠くに派遣された。公事には制限があり、妻に会う日はなかった。そして妻は嘆き悲しんで病の床に臥してしまった。年を重ねて男は戻った。そして妻を見ると、妻の容姿は疲れやつれて余りにも異なっていたので、言葉にならない。時に男は嘆き悲しんで涙を流し、歌を作って口ずさんだ(巻16-3804)。妻は臥したまま夫の歌を聴き、枕から頭を上げて、その声に応えて詠んだ歌。


二口解釈
・夫の黒髪が濡れている、淡雪が降るのに来てくれたようだ、私がこんなにも多く恋い慕っているので。

・恋い慕う 夫来ませり 雪の中