万葉集一日一首
(2004年7月1日〜9月30日)

その日の歌を掲載しています。
凡そ、歌番号の若い方から掲載しています。
歌をクリックすると解釈文を見ることが出来ます。


日付 一口解釈
9月30日:  世の常に 聞けば苦しき 呼子鳥 声なつかしき 時にはなりぬ 聞き苦しい不如帰の声が懐かしい時になった
9月29日:  春の野に あさる雉の 妻恋ひに おのがあたりを 人に知れつつ 妻恋う雉が鳴き、人に自分の居場所を教えてる
9月28日:  風交り 雪は降るとも 実にならぬ 我家の梅を 花に散らすな 風と雪よ、我家の梅の花を散らすな
9月27日:  山吹の 咲きたる野辺の つぼすみれ 此の春の雨に 盛りなりけり ツボスミレはこの春雨で勢いよく咲いている
9月26日:  霞立つ 野の上の方に 行きしかば 鴬鳴きつ 春になるらし 野の上で鴬が鳴く、春になったようだ
9月25日:  難波辺に 人の行ければ 後れ居て 春菜摘む子を 見るが悲しさ 後に残って春菜を摘む自分の娘がいじらしい
9月24日:  うち霧らし 雪は降りつつ しかすがに 我家の園に うぐひす鳴くも 雪は降っているが、庭では鴬がないている
9月23日:  春雨の しくしく降るに 高円の 山の桜は いかにかあるらむ 春雨が降る、山の桜はどうなっているだろうか
9月22日:  時は今は 春になりぬと み雪降る 遠き山辺に 霞棚引く もう春だ、遠くの雪山に霞みが棚引いている
9月21日:  霞立つ 春日の里の 梅の花 花に問はむと 我が思はなくに 綺麗な女性、その人に恋を問おうとは思わない
9月20日:  霞立つ 春日の里の 梅の花 山のあらしに 散りこすなゆめ 梅の花よ、嵐があっても夢にも散るな
9月19日:  含めりと 言ひし梅が枝 今朝降りし 沫雪にあひて 咲きぬらむかも 蕾だった梅は今朝の雪でも花が咲いたろうか?
9月18日:  蛙鳴く 神名火川に 影見えて 今か咲くらむ 山吹きの花 川に影を映して、山吹の花が咲いている?
9月17日:  霜雪も いまだ過ぎねば 思はぬに 春日の里に 梅の花見つ 未だ雪の季節と思っていたら、梅の花が咲いた
9月16日:  うちのぼる 佐保の河原の 青柳は 今は春べと なりにけるかも 佐保川の青柳は、春の姿になっているだろう
9月15日:  我が背子が みらむ佐保路の 青柳を 手折りてだにも 見むよしもがも 夫が見た佐保路の青柳を、私も見たい
9月14日:  百済野の 萩の古枝に 春待つと 居りし鴬 鳴きにけむかも 春、冬枯れた萩にいた鴬はもう鳴いたろうか
9月13日:  去年の春 逢へりし君に 恋ひにてし 桜の花は 迎えけらしも 去年の春会った貴方を桜の花が迎えている
9月12日:  明日よりは 春菜摘まむと 標めし野に 昨日も今日も 雪は降りつつ 春菜を摘もうとした野に雪が降り続いている
9月11日:  我が背子に 見せむと思ひし 梅の花 それとも見えず 雪の降れれば 白い梅を見せたいのに、白雪で見えなくなった
9月10日:  あしひきの 山桜花日並べて かく咲きたらば いたく恋ひめやも 山桜もこんなに長く咲いたら飽きられる
9月9日:  春の野に すみれ摘みにと 来し我そ 野をなつかしみ 一夜寝にける スミレを摘み来たが野が懐かしく寝てしまった
9月8日:  去年の春 い掘じて植ゑし 我がやどの 若木の梅は 花咲きにけり 去年庭に植えた梅の木は今年花が咲いた
9月7日:  うちなびく 春来るらし 山の際の 遠き木末の 咲き行く見れば 春のようだ、遠い梢の先にも花が咲いて行く
9月6日:  春山の 咲きのををりに 春菜摘む 妹が白紐 見らくし良しも 春山一杯の春菜を積む恋人は見いいものだ
9月5日:  沫雪か はだれに降ると 見るまでに 流らへ散るは 何の花そも 淡雪が振りながら溶けて流れる、何という花か
9月4日:  神なびの 伊浪瀬の社の 呼子鳥 いたくな鳴きそ 我が恋まさる 不如帰よそんなになくな、恋しさ募る
9月3日:  石ばしる 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも 滝のそばに蕨が生えた!春になったようだ
9月2日:  我が背子を いづち行かめと さき竹の 背向に寝しく 今し悔しも 背中を向けて寝なければよかった
9月1日:  幸の いかなる人か 黒髪の 白くなるまで 妹の声を聞く 髪が白くなるまで妻の声を聞ける人は幸せだ
8月31日:  世間は まこと二代は 行かざらし 過ぎにし妹に 逢はなく思へば 人生は二度ないようだ、亡き妻には会えない
8月30日:  秋津野に 朝ゐる雲の 失せゆけば 昨日も今日も なき人思ほゆ 火葬が終ったあとは毎日亡き人を思い出す
8月29日:  潮満てば 入りぬる磯の 草なれや 見らく少なく 恋ふらくの多き 会う機会が少ないと思いだけが増してゆく
8月28日:  明日香川 瀬々に玉藻は 生ひたれど しがらみあれば なびきあへなくに 美しい藻は生まれるが靡きあえない
8月27日:  冬こもり 春の大野を焼く人は 焼き足らねかも 我が心焼く 少女よ、大人になるまで守りたい
8月26日:  冬こもり 春の大野を焼く人は 焼き足らねかも 我が心焼く 野焼きの人たちは、私も心も焼いている
8月25日:  陸奥の 安太多良真弓 弦着けて 引かばか人の 吾を言なさむ 弓を引くように人の気を引いたら噂になる
8月24日:  朝づく日 向かひの山に 月立てり見ゆ 遠妻を 持たる人し 見つつ偲ばむ 月を見ながら遠くに住む妻を偲ぼう
8月23日:  この岡に 草刈る小子 然な刈りそね 在りつつも 君が来まさば 御馬草にせむ 少年よ草を刈るな、あの方の馬にやりたい
8月22日:  春日すら 田に立ち疲かる 君は哀しも 若草の妻なき君は 田に立ち疲る 若草のような妻を亡くした君は悲しそうだ
8月21日:  梯立の 倉橋川の 石の橋はも 男ざかりに わが渡りてし 石の橋はも 私が盛んだ頃渡ったことがある飛び石だ
8月20日:  梯立の 倉橋山に 立てる白雲 見まく欲り わがするなべに 立てる白雲 私が会いたいと思う程、煙も多く立ち昇る
8月19日:  君がため 手力疲れ 織りたる衣ぞ 春さらば いかなる色に 摺りてば好けむ 貴方に織った衣、春には何の色に染めようか
8月18日:  巻向の 山辺とよみて往く水の みなわのごとし 世の人われは 人の世にいる私の命は水の泡の消えて行く
8月17日:  児らが手を 巻向山は 常にあれど 過ぎにし人に 行き巻かめやも 亡くなった人を手に巻くことが出来ようか
8月16日:  今年行く 新島守が麻衣 肩の紕は 誰か取り見む 新しい島守の肩のほつれは誰が繕うのだろう
8月15日:  西の市に ただ独り出て 眼並べず 買ひてし 絹の商じこりかも 市場で一人で買った物は買い損ないかも
8月14日:  暁と 夜烏鳴けど この山上の 木末の上は いまだ静けし 朝だ!と烏は鳴くが、梢の上はまだ静かだ
8月13日:  あしひきの 山つばき咲く 八つ峰越え 鹿待つ君の 斎ひ妻かも 私は鹿獲りから帰らぬあなたの離れた妻だ
8月12日:  大船に 楫しもあらなむ 君無しに 潜せめやも 波立たずとも 船に梶があれば潜るのに、ないので潜らない
8月11日:  楽浪の 志賀津の白水郎は われ無しに 潜はな為そ 波立たずとも 海に潜るのは私が見ているときにして欲しい
8月10日:  あしひきの 山行き暮らし 宿借らば 妹立ち待ちて やど貸さむかも 日が暮れた、可愛い人に宿を貸りたい
8月9日:  ぬばたまの 黒髪山を 朝越えて 山下露に 濡れにけるかも 山を朝越えて来たら、露で濡れてしまった
8月8日:  玉くしげ 見諸戸山を 行きしかば 面白くして 古思ほゆ 三輪山に行くと昔のことが思い出される
8月7日:  静けくも 岸には波は 寄せけるか この家通し 聞きつつ居れば 波が静かに岸に寄せているようだ
8月6日:  夢のみに 継ぎて見えつつ 竹島の 磯越す波の しくしく思ほゆ 磯を越す波のように何度も恋人を思い出す
8月5日:  波高し いかに楫取り 水鳥の 浮き寝やすべき なほや漕ぐべき 波が高い!止まろうか、漕ぎ進もうか
8月4日:  風早の 三穂の浦廻を 漕ぐ舟の 舟人さわぐ 波立つらしも 舟人が騒いでる、これから波が高くなるようだ
8月3日:  黒牛の海 紅にほふ ももしきの 大宮人し 漁すらすも 海に紅い色が見える、宮人が漁しているようだ
8月2日:  紀伊の国の 雑賀の浦に 出て見れば 海人の燎火 波の間ゆ見ゆ 漁師の灯火が波の間から見える
8月1日:  山越えて 遠津の浜の 石つつじ わが来るまでに 含みてあり待て 躑躅よ、私が帰るまで蕾のままでいてくれ
7月31日:  家にして われは恋ひむな 印南野の 浅茅が上に 照りし月夜を 印南野に照る月を恋してしまったようだ
7月30日:  印南野は 行き過ぎぬらし 天づたふ 日笠の浦に 波立てり見ゆ 印南野を通り過ぎてしまったようだ
7月29日:  大御船 泊ててさもらふ 高島の 三尾の勝野の 渚し思ほゆ 舟が泊っていた勝野の渚を思い出す
7月28日:  夕なぎに あさりする鶴 潮満てば 沖波高み 己が妻呼ぶ 潮が満ちると、餌を取っているツルが妻を呼ぶ
7月27日:  年魚市潟 潮干にけらし 知多の浦に 朝漕ぐ舟も 沖に寄る見ゆ 愛知潟の潮が引いた、船が沖に寄っている
7月26日:  円方の 港の渚鳥 波立てや 妻呼びたてて 辺に近づくも 波が高いので中州の鳥が岸に寄ってくる
7月25日:  家離り 旅にしあれば 秋風の 寒き夕に 雁鳴きわたる 旅では秋風も寒い、その空を雁が飛んで行く
7月24日:  難波潟 潮干に立ちて 見わたせば 淡路の島に 鶴渡る見ゆ 淡路島につるが飛んでゆく
7月23日:  さ夜深けて 堀江漕ぐなる 松浦船 楫の音高し 水脈早みかも 楫の音が高いのは波が早いからか?
7月22日:  しなが鳥 猪名野を 来れば 有間山 夕霧立ちぬ 宿は無くして 温泉の山に夕霧は昇るが、泊る宿はない
7月21日:  ちはやひと 宇治川波を 清みかも 旅行く人の 立ちかてにする 川の流れが清らかなので出発しがたい
7月20日:  宇治川を 舟渡せをと 呼ばへども 聞こえざるらし 楫の音もせず 舟を返せと叫んでも全然聞こえないようだ
7月19日:  宇治川は 淀瀬なからし 網代人 舟呼ばふ声 をちこち聞こゆ 宇治川には人が歩いて渡る瀬がないようだ
7月18日:  山の際に 渡る秋沙の 往きてゐむ その川の瀬に 波立つなゆめ 川の瀬よ、波を立てるな
7月17日:  往く川の 過ぎにし人の 手折らねば うらぶれ立てり 三輪の檜原は 三輪の檜原はしょんぼりしている
7月16日:  いにしへに ありけむ人も 我が如か 三輪の檜原に かざし折りけむ 昔も私のように桧の原で簪を折ったろうか
7月15日:  ぬばたまの わが黒髪に 降りなづむ 天の露霜 取れば消につつ 黒髪に降る露は手にとると消えてしまう
7月14日:  わが紐を 妹が手もちて 結八川 また還り見む 万代までに 私の紐を愛する人が結ぶと結ばれる
7月13日:  さ桧の隈 桧の隈川の 瀬を速み 君が手取らば 言寄せむかも 川が速くても貴方の手を取れば噂になる
7月12日:  泊瀬川 流るる水脈の 瀬を早み 井堤越す浪の 音の清け 堤を越えて聞こえる川の音が清らかだ
7月11日:  泊瀬川 白木綿花に 落ちたぎつ 瀬をさやけみと 見に来しわれを 泊瀬川の清い流れを見にきた私だ
7月10日:  蛙鳴く 清き川原を 今日見ては 何時か越え来て 見つつ偲はむ 蛙鳴く川を又、何時来て見れるだろうか
7月9日:  ぬば玉の 夜去り来れば 巻向の 川音高しも 嵐かも疾き 嵐が激しく川の流れる音が高い
7月8日:  巻向の 痛足の川ゆ 往く水の 絶ゆること無く またかへり見む 川の水の景色を又返って来て見よう
7月7日:  三諸つく 三輪山見れば 隠口の 始瀬の檜原 思ほゆるかも 三輪山を見ると初瀬の桧原を思い出す
7月6日:  三諸の その山並みに 子らが手を 巻向山は 継ぎのよろしも 巻向山は山並みの続く姿がいい
7月5日:  大海に 島もあらなくに 海原の たゆたふ波に 立てる白雲 島が見えない大海原に、雲が湧き上がる
7月4日:  あしひきの 山川の瀬の 鳴るなへに 弓月が岳に 雲立ちわたる 川の音が大きくなるにつれ雲が広がってゆく
7月3日:  痛足川 川波立ちぬ 巻目の 由槻が岳に 雲居立てるらし 雲が湧き上がるように川波が立っている
7月2日:  ももしきの 大宮人の 退り出て あそぶ今夜の 月の清けさ 今夜の月は一段と清らかだ
7月1日:  海原の 道遠みかも 月読の 光少き 夜は更けにつつ 道が遠いからか、夜更けの月の光が弱い




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