万葉集一日一首
(2003年10月1〜12月31日)

その日の歌を掲載しています。
凡そ、歌番号の若い方から掲載しています。
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日付 一口解説
12月31日:  王の 親魄逢へか 豊国の 鏡の山を 宮と定むる 王の心にかなった山を宮と定めた
12月30日:  ももづたふ 磐余の池に 鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ 鴨を私はもう二度と見ることが出来ない
12月29日:  陸奥の 真野の草原 遠けども 面影にして 見ゆといふものを あなたはさっぱり来てくれない
12月28日:  見えずとも 誰恋ひざらめ 山のはに いさよふ月を 外に見てしか ためらっている人を遠目にでも見たい
12月27日:  鳥総立て 足柄山に 船木伐り 木に伐り行きつ あたら船木を 思っていた人は、他人の妻になった
12月26日:  軽の池の 浦廻行き廻る 鴨すらに 玉藻の上に ひとり寝なくに 鴨さえ一人で寝ないのに、私は独り寝
12月25日:  いにしへに 梁打つ人の なかりせば ここにもあらまし 柘の枝はも 梁打つ人がいなければ柘は流れて来た
12月24日:  この夕 柘のさ枝の 流れ来ば 梁は打たずて 取らずかもあらむ 梁を仕掛けてないので、取り損なうかも
12月23日:  あられふり 吉志美が嶽を 険しみと 草取りはなち 妹が手を取る 草取る代わりに、愛しい人の手をとった
12月22日:  わが屋戸に 韓藍蒔き生ほし 枯れぬれど 懲りずてまたも 蒔かむとぞ思ふ けいとうが枯れた、又種を蒔こう
12月20日:  いにしへの 古き堤は 年深み 池の渚に 水草生ひにけり 古い主のない池に、水草が生えてきた
12月19日:  青山の 嶺の白雲 朝にけに 恒に見れども めづらしわが君 朝昼常に見ても飽きないあなたです
12月18日:  吉野なる 夏実の河の 川よどに 鴨ぞ鳴くなる 山かげにして 日陰の川に、鴨の鳴き声が響く
12月17日:  太夫の 弓末振り起し 射つる矢を 後見む人は 語りつぐがね 私の弓の勢いを後に語り継いでくれ
12月16日:  あきづ羽の 袖振る妹を 珠くしげ 奥に思ふを 見たまへ我が君 あの手を振る女性が、私が心に思う人
12月15日:  武庫の浦を 漕ぎ廻る小舟 粟島を 背向に見つつ 羨しき小舟 武庫川の海を漕ぎまわる舟は羨ましい
12月14日:  験なき 物を念はずは 一杯の 濁れる酒を 飲むべくあるらし もの思うより、お酒を飲むほうがまし
12月13日:  憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ そのかの母も 吾を待つらむそ そろそろお暇、家では家族が待っている
12月12日:  白縫 筑紫の綿は 身に著けて 未だは着ねど 暖かに見ゆ 筑紫の真綿はいかにも暖かそうだ
12月11日:  我が命も 常にあらぬか昔見し 象の小川を 行きて見むため 命長らえて、昔の景色をまた見たい
12月10日:  我が盛り またおちめやも ほとほとに 奈良の都を 見ずかなりなむ 私は奈良の都を見ずに終るだろうか
12月9日:  あをによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり 奈良は花のように、今華やいでいる
12月8日:  田児の浦ゆ 打出でて見れば 真白にぞ 不尽の高嶺に 雪はふりける 峠を越したら、真っ白な富士山が見えた
12月7日:  昼見れど 飽かぬ田子の浦 大君の 命恐 み夜見つるかも 昼見れば綺麗な田子の裏を、夜に見た
12月6日:  倉橋の 山を高みか 夜ごもりに 出で来る月の 光乏しき 山が高いと、月の光が少なく寂しい
12月5日:  ここにして 家やもいづく 白雲の たなびく山を 越えて来にけり 家は何処に、雲の棚引く山を越えて来た
12月4日:  とく来ても 見てましものを 山背の 高の槻群 散りにけるかも 早く来ればよかった、紅葉は散っている
12月3日:  いづくにか 吾れはやどらむ 高島の 勝野の原に この日暮れなば この野原で日が暮れたら、どこに泊ろう
12月2日:  桜田へ 鶴鳴き渡る 年魚市潟 しほひにけらし 鶴なきわたる 潮が引いたようだ、鶴が鳴いて渡って行く
12月1日:  旅にして もの恋しきに 山下の 赤のそほ船 奥にこぐ見ゆ 物恋しい時に、朱塗りの舟が漕いで行く
11月30日:  むささびは 木末求むと あしひきの 山の猟夫に あひにけるかも 木の先に飛んで来て、猟人に見つかった
11月29日:  近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ 湖を千鳥が飛んで行くと、昔を思い出す
11月28日:  苦しくも 降り来る雨か 三輪の崎 狭野の渡りに 家もあらなくに 苦しい時に降る雨だ、周りに家もない
11月27日:  もののふの 八十氏河の 網代木に いさよふ波の 行く方知らずも 漂う水のように、行く末はわからない
11月26日:  矢釣山 木立も見えず 降り乱る 雪に驟く朝たぬしも 雪の降る朝、馬で早く走るのは楽しい
11月25日:  天ざかる 夷の長道ゆ 恋ひくれば 明石の門より 大和島見ゆ 都の帰途、やっと大和の島が見えてきた
11月24日:  ともしびの 明石大門に 入らむ日や こぎぎわかれなむ 家のあたり見ず いよいよ大和とお別れ、家はもう見えない
11月23日:  稲日野も 行き過ぎがてに 思へれば 心恋しき 加古の島見ゆ 待ち焦がれた島がやっと見えてきた
11月22日:  玉藻刈る 敏馬を過ぎて 夏草の 野島の崎に 船近づきぬ 舟は藻を刈る敏馬から野島の岬に来た
11月21日:  滝の上の 三船の山に 居る雲の 常にあらむと 我が思はなくに 雲のようにも自分も何時かは消えていく
11月20日:  大宮の 内まで聞こゆ 網引すと 網子調ふる 海人の呼び声 網引きの漁師の声が、宮まで聞こえる
11月19日:  否と言へど 語れ語れと 宣らせこそ 志斐いは奏せ 強ひ語りといふ 話せと言うから私は話しているのに・・
11月18日:  いなと言へど 強ふる志斐のが 強ひ語り このころ聞かずて 我れ恋ひにけり 無理に話を聞かされると又聞きたくなる
11月17日:  大君は 神に座ませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも 大君は神なので、雷の上にいる
11月16日:  鴨山の 岩根しまける 我れをかも 知らにと妹が 待ちつつあるらむ 妻は知らずに、私を待っているだろう
11月15日:  妻もあらば 摘みてたげまし 佐美の山 野の上のうはぎ 過ぎにけらずや 妻もいれば一緒に菜を食べさせたものを
11月14日:  楽浪の 志賀津の子らが 罷り道の 川瀬の道を 見れば寂しも 葬送の道を見るのはさみしい
11月13日:  秋山の 黄葉を茂み 迷ひぬる 妹を求めむ 山道知らずも 妻を捜したい、道は知らないのだが
11月12日:  ふる雪は あはになふりそ よなばりの 猪養の岡の 塞ならまくに 雪よ多く降るな、岡に眠る皇女が寒い
11月11日:  敷妙の 袖かへし君 玉垂の 越野過ぎゆく またも逢はめやも 夜の衣の袖を交した君は、もう帰らない
11月10日:  朝日照る 嶋の御門に おほほしく 人音もせねば まうら悲しも 立派な建物も人が来ないと寂しい
11月9日:  水伝ふ 礒の浦廻の 石上つつじ 茂く咲く道を また見むかも 岩躑躅さくこの道、又見るだろうか
11月8日:  東の たぎの御門に 侍へど 昨日も今日も 召す言もなし 訪れる人がなく立派な建物も悲しい
11月7日:  嶋の宮 勾りの池の放ち鳥 人目に恋ひて 池に潜かず 寂しくて水鳥も、潜ろうとしない
11月6日:  茜さす 日は照らせれど ぬばたまの 夜渡る月の 隠らく惜しも 日が照るのはいいが、月が隠れるは残念
11月5日:  神風の 伊勢の国にもあらましを 何しか来けむ 君もあらなくに 何で戻った?あなたのいない京なのに
11月4日:  北山に たなびく雲の 青雲の 星離れ行き 月を離れて 雲間から、星も月も離れてゆく
11月3日:  山吹の 立ちよそひたる 山清水 汲みに行かめど 道の知らなく 清水を汲みに行きたいが、道を知らない
11月2日:  人はよし 念ひやむとも 玉蘰 影に見えつつ 忘らえぬかも 人は忘れても、私はあなたを忘れない
11月1日:  青旗の 木幡の上を 通ふとは 目には見れども 直に逢はぬかも 目には浮かぶが、会う事は出来ない
10月31日:  天の原 振り放け見れば 大君の 御寿は長く 天足らしたり 振り返れば、長く回りに満ちていた
10月30日:  梓弓 引かばまにまに 依らめども 後の心を 知りがてぬかも 結婚しても、後の心変わりが心配だ
10月29日:  み薦刈る 信濃の真弓 引かずして 弦はくるわざを 知ると言はなくに 気も引かないようでは、女性は従えない
10月28日:  み薦刈る 信濃の真弓 わが引かば 貴人さびて いなと言はむかも 気を引こうとしても、あなたは嫌と言うだろう
10月27日:  われはもや 安見児得たり 皆人の得難にすとふ 安見児得たり 私は普通の人では得られぬ女性を得た
10月26日:  玉くしげ みむろの山の さなかづら 寝ずはつひに ありかつましじ かずらの様に、寝ずにはおれないだろう
10月25日:  玉くしげ 覆ふを安み 開けていなば 君が名はあれど 吾が名し惜しも 男のあなたはいいが、女の私は名が惜しい
10月24日:  秋山の 樹の下隠り 逝く水の われこそ益さめ 御思いよりは あなたより、私のほうが思っている
10月23日:  妹が家も 継ぎて見ましを 大和なる 大島の嶺に 家もあらましを 愛する人の家を見たいが、それは無理
10月22日:  居明かして 君をば待たむ ぬば玉の わが黒髪に 霜はふるとも 寝ずに待とう、髪に霜は降っても
10月21日:  秋の田の 穂の上に霧らふ 朝霞 いづへのかたに わが恋やまぬ 朝霧のように、恋も消えるだろうか
10月20日:  在りつつも 君をば待たむ 打ちなびく わが黒髪に 霜の置くまでに ずっと待ちます、髪に霜がおりるまで
10月19日:  飛ぶ鳥の 有りがよひつつ 見らめども 人こそ知らね 松は知るらむ 御霊が見ている、松つのみが知る
10月18日:  磐代の 野中に立てる 結び松 心も解けず いにしへ思ほゆ 枝を結んだ松を見ると、昔を思い出す
10月17日:  磐代の 岸の松が枝 結びけむ 人はかへりて また見けむかも 松の枝を結んだ人は、又見ただろうか
10月16日:  家にあれば 笥に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る 旅ならでは、椎の木の葉でご飯を食べる
10月15日:  磐白の 浜松が枝を 引き結び ま幸くあらば また帰り見む 疑いが晴れたら、又戻って松を見よう
10月14日:  秋山に 落つる黄葉 しましくは な散り乱ひそ 妹があたり見む 紅葉よ、妻を見るので散るのを止めて
10月13日:  ささの葉は み山もさやに さやげども 我れは妹思ふ 別れ来ぬれば 笹は綺麗だが、私は残した妻を思う
10月12日:  石見のや 高角山の 木の間より 我が振る袖を 妹見つらむか 手を振る私を妻は見ているだろうか
10月11日:  遊士に われはありけり 屋戸かさず 還しし我れぞ 風流士にはある 風流人だからこそ宿を貸さなかった
10月10日:  遊士と 我れは聞けるを 屋戸かさず われをかへせり おその風流士 風流人が風流を解さなかった?
10月9日:  人言を 繁み言痛み 己のが世に 未だ渡らぬ 朝川渡る 噂が激しく、朝川を渡って会いに行く
10月8日:  後れゐて 恋ひつつあらずは 追ひ追いしかむ 道の隈に 標ゆへわが背 待っているより、後を追って行きたい
10月7日:  秋の田の 穂向の寄れる かた寄りに 君によりなな 事痛かりとも 噂は激しくとも、君について生きたい
10月6日:  いにしへに 恋ふらむ鳥は 霍公鳥 けだしや鳴きし わが念へる如 古を恋うる鳥は私のように泣いただろう
10月5日:  いにしへに 恋ふる鳥かも 弓絃葉の 御井の上より 鳴き渡り行く 昔を恋する鳥が、鳴きながら飛んでいく
10月4日:  我を待つと 君が濡れけむ あしひきの 山のしづくに ならましものを あなたが濡れた山の雫になりたい
10月3日:  あしひきの 山のしづくに 妹待つと わが立ち濡れし 山のしづくに あなたを待って、山の雫で濡れた
10月2日:  二人行けど 行き過ぎがたき 秋山を いかにか君が ひとり越ゆらむ 1人で山をどうやって越えるのだろうか
10月1日:  わが背子を 大和へやると さ夜ふけて あかとき露に わが立ちぬれし 夜明けに君を見送り、露に濡れた




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