(JAXA HPより)
万葉集一日一首
(2005年1月1日〜3月31日)
その日の歌を掲載しています。
凡そ、歌番号の若い方から掲載しています。
歌をクリックすると解釈文を見ることが出来ます。
(JAXA HPより)
日付
歌
一口解釈
3月31日:
眉根掻き 鼻ひ紐解け 待つらむか 何時しか見むと 思へるわれを
眉を掻いて、くしゃみをして私を待っているだろうか
3月30日:
恋ひ死なば 恋ひも死ねとか 吾妹子が 吾家の門を 過ぎて行くらむ
激しい恋で、死ぬなら死ねと我が妹子
3月29日:
赤らひく 肌も触れずて 寝たれども 心を異しく わが思はなくに
肌に触れず独りで寝ても私の心は変わっていない
3月28日:
行き行きて 逢はぬ妹ゆゑ ひさかたの 天の露霜に 濡れにけるかも
会えぬのに遠くまで来て露に濡れてしまった
3月27日:
朝影に わが身はなりぬ 玉かぎる ほのかに見えて 去にし子ゆゑに
朝影のように私の体は痩せて細くなった
3月26日:
たまゆらに 昨日の夕 見しものを 今日の朝に 恋ふべきものか
夕べちょっと見ただけなのに今朝は恋しい
3月25日:
恋するに 死するものに あらませば わが身は千遍 死にかへらまし
恋をすると死ぬものなら私は千回も死んでしまう
3月24日:
日並べば 人知りぬべし 今日の日も 千年のごとく ありこせぬかも
会う日一日が千年の長さになればいいのに
3月23日:
うち日さす 宮道を人は 満ち行けど わが思ふ君は ただ一人のみ
宮道にあふれる程人がいても私が思う君は唯一人
3月22日:
わが後に 生まれむ人は わがごとく 恋する道に 会ひこすなゆめ
私の後の人は、私のように恋の路に入るな
3月21日:
何時はしも 恋ひぬ時とは あらねども 夕かたまけて 恋ひは為方無し
夕方になると恋が募ってどうにもしようがない
3月20日:
恋ひ死なば 恋ひも死ねとや 玉桙の 路行く人の 言も告げなく
路行く人は、少しでも消息を伝えてくれないか
3月19日:
人の寝る 味眠は寝ずて 愛しきやし 君が目すらを 欲りて嘆くも
愛しいあなたの顔が見たく安眠も出来ない
3月18日:
たらちねの 母が手放れ 斯くばかり 為方なきことは いまだせ為くに
母の元を離れた後、こんなに仕方ない事はない
3月17日:
玉垂の 小簾の隙に 入り通ひ来ね たらちねの 母が問はさば 風と申さむ
簾の間を通って入れ、母には風と言おう
3月16日:
岡の崎 廻みたる道を 人な通ひそ ありつつも 君が来まさむ 避き道にせむ
岡を巡る道に人は来るな、君の隠れ道だから
3月15日:
人の親の 少女児据ゑて 茂る山辺から 朝な朝な 通ひし君が 来ねばかなしも
子供を置いて通って来ていた君が来ないと悲しい
3月14日:
何せむに 命をもとな 長く欲りせむ 生けりとも 我が思ふ妹に やすく逢はなくに
長生きしても思う人にあうのは難しい
3月13日:
朝戸出の 君が足結を 濡らす露原 つとに起き 出でつつわれも 裳裾濡らさな
朝帰る君の足結いを露が濡らす、私も服を濡らそう
3月12日:
うつくしと わが思ふ妹は 早も死なぬか 生けりとも われに寄るべしと 人の言はなくに
愛しいと思う人が私に靡かないなら早く死ねばいい
3月11日:
太夫の 思ひ乱れて 隠せるその妻 天地に 徹り照るとも 顕れめやも
日は照っても隠した妻は外に見えないだろう
3月10日:
長谷の 斎槻が下に わが隠せる妻 あかねさし 照れる月夜に 人見てむかも
月の光で隠した人を人は見たろうか
3月9日:
新室の 壁草刈りに 座し給はね 草の如 寄り合ふ少女は 君がまにまに
壁の草を刈ったら草のような少女は君のまにまに
3月8日:
わが屋戸に 咲きたる梅を 月夜よみ 夕夕見せむ 君をこそ待て
梅は咲き、月は良し、毎夜貴方にこそ花を見せたい
3月7日:
思ひ出づる 時は為方なみ 豊国の 木綿山雪の 消ぬべく思ほゆ
思い出す時は木綿山の雪のように身が消えてしまう
3月6日:
霰ふり いたも風吹き 寒き夜や 波多野に今夜 我が独り寝む
風が強く霰の降る寒い夜に我独りで寝る
3月5日:
小竹の葉に はだれ降り覆ひ 消なばかも 忘れむといへば 益して思ほゆ
死なないと貴方を忘れないと言う妹が可愛い
3月4日:
はなはだも 夜更けてな行き 道の辺の 斎小竹の上に 霜の降る夜を
夜更に出るのは止めなさい、霜が降っている
3月3日:
我が背子を 今か今かと 出で見れば 淡雪降れり 庭もほどろに
夫の帰りを待って外に出たら雪が降っていた
3月2日:
夕されば 衣手寒し 高松の 山の木ごとに 雪ぞ降りたる
夕方は寒く、高松山の木毎に雪が降る
3月1日:
あしひきの 山路も知らず 白橿の 枝もとををに 雪の降れれば
雪が降り、枝はたわみ山路は分からない
2月28日:
巻向の 檜原もいまだ 雲居ねば 小松が末ゆ 沫雪流る
雲が居ないのに松の枝先に淡雪が降る
2月27日:
あしひきの 山かも高き 巻向の 岸の小松に み雪降り来る
山が高いせいか、崖の小松に雪が降る
2月26日:
秋されば 雁飛び越ゆる 龍田山 立ちても居ても 君をしそ思ふ
立っても座っても君を思う
2月25日:
さを鹿の 入野の薄 初尾花 いつしか妹が 手を枕かむ
妹をいつ手枕に出来るだろうか
2月24日:
思はぬに しぐれの雨は 降りたれど 天雲晴れて 月夜さやけし
時雨の雲が晴れて月がはっきり見える
2月23日:
我が背子が 挿頭の萩に 置く露を さやかに見よと 月は照るらし
萩の簪に落ちた露をよく見よと月が照っている
2月22日:
夕さらず 河蝦鳴くなる 三輪川の 清き瀬の音を 聞かくし良しも
夕方はいつも蛙が鳴き、川の瀬音は清らかだ
2月21日:
さ男鹿の 妻呼ぶ山の 丘辺なる 早田は刈らじ 霜は降るとも
牡鹿が妻を呼ぶ山の周りの早稲田は刈らない
2月20日:
我が門の 浅茅色づく 吉隠の 浪柴の野の 黄葉散るらし
秋、露が降りて我が家の門の茅が色ついた
2月19日:
秋されば 置く白露に わが門の 浅茅が末葉 色づきにけり
我が家の茅は色づき、吉隠の紅葉は散るようだ
2月18日:
大坂を わが越え来れば 二上に 黄葉流る 時雨ふりつつ
二上山に着いたら紅葉と時雨が降っている
2月17日:
九月の しぐれの雨に 濡れ通り 春日の山は 色づきにけり
春日山は時雨で濡れて、色づいている
2月16日:
春は萌え 夏は緑に 紅の まだらに見ゆる 秋の山かも
今は紅に見える秋の山だ
2月15日:
秋萩の 枝もとををに 露霜置き 寒くも時は なりにけるかも
霜が降りて萩の枝がたわむ、寒くなったものだ
2月14日:
庭草に 村雨ふりて 蟋蟀の 鳴く声聞けば 秋づきにけり
にわか雨が降り、蟋蟀が鳴くともう秋だ
2月13日:
秋風の 寒く吹くなへ 我が屋前の 浅茅がもとに 蟋蟀鳴くも
秋風の中、庭先で蟋蟀が鳴いている
2月12日:
山の辺に い行く猟夫は 多かれど 山にも野にも さ男鹿鳴くも
いくら猟をしても野も山も鹿の鳴き声だ
2月11日:
朝に行く 雁の鳴く音は わが如く 物思へかも 声の悲しき
朝早く行く雁の声は悲しい
2月10日:
秋風に 倭へ越ゆる 雁がねは いや遠さかる 雲隠りつつ
秋風に乗って倭へ雁が飛んで行く
2月9日:
見まく欲り 我が待ち恋ひし 秋萩は 枝もしみみに 花咲きにけり
見たいと思っていた秋萩が枝一杯に花咲いた
2月8日:
恋しくは 形見にせよと 我が背子が 植ゑし秋萩 花咲きにけり
形見にと植えた秋萩の花が咲いた
2月7日:
真葛原 なびく秋風 吹くごとに 阿太の大野の 萩の花散る
阿太の野に秋風が吹く度に萩の花が散る
2月6日:
渡守 舟はや渡せ 一年に 二度通ふ 君にあらなくに
早く船を渡せ、二度は来ない君だから
2月5日:
渡守 舟渡せをと 呼ぶ声の 至らねばかも 楫の音のせぬ
渡し守の”船返せが”聞こえなかったらしい
2月4日:
秋風の 吹きただよはす 白雲は 織女の 天つ領巾かも
白雲は織姫の羽衣だろうか
2月3日:
天の川 水さへに照る 舟泊てて 舟なる人は 妹に見えきや
天の川の彦星を織姫は見ただろうか
2月2日:
六月の 地さへ割けて 照る日にも 我が袖乾めや 君に逢はずして
君に会えず、私の袖の涙は乾かない
2月1日:
橘の 花散る里に 通ひなば 山霍公鳥 響もさむかも
乙女に会いに里に通ったら噂になるだろう
1月31日:
卯の花の 咲き散る丘ゆ 霍公鳥 鳴きてさ渡る 君は聞きつや
卯の花の丘を越すホトトギスの鳴き声を聴いたか
1月30日:
大和には 鳴きてか来らむ 霍公鳥 汝が鳴くごとに 亡き人思ほゆ
ホトトギスが鳴くと亡き人が偲ばれる
1月29日:
霍公鳥 厭ふ時無し 菖蒲 鬘にせむ日 此ゆ鳴き渡れ
不如帰よ菖蒲を鬘に差す日に鳴いて通れ
1月28日:
旅にして 妻恋すらし 霍公鳥 神名火山に さ夜更けて鳴く
ホトトギスは妻を恋して夜鳴いている
1月27日:
春雨の やまず降る降る わが恋ふる 人の目すらを 相見しめなく
春雨が恋人が来るのを邪魔してる
1月26日:
川の上の いつ藻の花の 何時も何時も 来ませ我が背子 時じけめやも
君ならば何時来ても時期はずれではない
1月25日:
石上 布留の神杉 神びにし われやさらさら 恋に逢ひにける
年をとって、又新しい恋に出あった
1月24日:
春雨に 衣はいたく 通らめや 七日し降らば 七日来じとや
春雨であまり濡れないのに会いに来ない
1月23日:
春山の 霧に惑へる 鴬も われにまさりて 物思はめや
霧の中で迷う鴬も私ほどは悩むまい
1月22日:
春日野の 友うぐひすの 鳴き別れ 帰ります間も 思ほせわれを
別れて帰る途中も私を思って
1月21日:
物皆は 新しき良し ただしくも 人は奮きし 宜しかるべし
物は新品、人は古いほうが良い
1月20日:
冬過ぎて 春し来れば 年月は 新たなれども 人は古り行く
春が来て年は新しくなるが人は老いてゆく
1月19日:
ももしきの 大宮人は 暇あれや 梅を挿頭して ここに集へる
大宮人は暇らしい、梅を簪にここに集る
1月18日:
春の野に 心伸べむと 思ふどち 来し今日の日は 暮れずもあらぬか
心伸ばしに来た今日は、暮れないで欲しい
1月17日:
春日野に 煙立つ見ゆ 少女らし 春野のうはぎ 摘みて煮らしも
春日野に煙、少女達が菜を煮ているようだ
1月16日:
春されば 樹の木の暗の 夕月夜 おぼつかなしも 山陰にして
春は月がぼんやりして木の間が暗い
1月15日:
春雨は 甚くな降りそ 桜花 いまだ見なくに 散らまく惜しも
未だ見ぬ桜が散る、春雨よ多くは降るな
1月14日:
うちなびく 春さり来れば しかすがに 天雲霧らひ 雪は降りつつ
春なのに雨雲が空を覆い雪が降る
1月13日:
紫草の 根延ふ横野の 春野には 君を懸けつつ 鴬鳴くも
春野では君に恋して鴬が鳴いている
1月12日:
春霞 流るるなへに 青柳の 枝くひ持ちて 鴬鳴くも
春霞の流れると、鴬が鳴いた
1月11日:
子らが名に 懸けの宜しき 朝妻の 片山岸に 霞たなびく
朝妻の名前がぴったりの山に霞みが棚引く
1月10日:
玉かぎる 夕さり来れば さつ人の 弓月が岳に 霞たなびく
春、夕方になると弓月ガ岳に霞が棚引く
1月9日:
巻向の 桧原に立てる 春霞 おぼにし思はば なづみ来めやも
霞のようにぼんやりなら難儀して此処に来ない
1月8日:
ひさかたの 天の香具山 このゆふべ 霞たなびく 春立つらしも
香具山に霞み棚引く、春になったようだ
1月7日:
墓の上の 木の枝靡けり 聞きしごと 血沼壮士に し寄りにけらしも
墓の木は血沼壮士に靡いている
1月6日:
芦屋の 菟原処女の 奥津城を 徃き来と見れば 哭のみし泣かゆ
墓を見ると菟原処女を思って泣けてくる
1月5日:
勝鹿の 真間の井を見れば 立ち平し 水汲ましけむ 手児奈し思ほゆ
井戸を見ると、水汲みに通った手児奈を思う
1月4日:
別れても またも逢ふべく 思ほえば 心乱れて われ恋ひめやも
又会えると思う別れなら、心は乱れない
1月3日:
語りつぐ からにも幾許 恋しきを 直目に見けむ 古壮士
話より、直に見た人はもっと恋しいだろう
1月2日:
古への 小竹田壮士の 妻問ひし 莵原処女の 奥津城ぞこれ
求婚を断れずに命を絶った莵原処女の墓だ
1月1日:
玉津島 礒の浦廻の 真砂にも にほひて行かな 妹も触れけむ
玉津馬の砂に着物を染めて行こう
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