(JAXA HPより)
万葉集一日一首
(2005年7月1日〜9月30日)
その日の歌を掲載しています。
凡そ、歌番号の若い方から掲載しています。
歌をクリックすると解釈文を見ることが出来ます。
(JAXA HPより)
日付
歌
一口解釈
9月30日:
我が背子を 何どかも言はむ 武蔵野の うけらが花の 時なきものを
何時も恋しい我が夫をなんと言おうか
9月29日:
入間道の 大家が原の い這ゐ蔓 引かばぬるぬる 我にな絶えそね
蔓が切れないように私と仲も切れないように
9月28日:
恋しけば 袖も振らむを 武蔵野の うけらが花の 色に出なゆめ
私が袖をふろう、貴方は恋心を顔に出さないように
9月27日:
武蔵野の 小ぐきが雉 立ち別れ 去にし宵より 夫ろに逢はなふよ
分かれた後、あの人に遭っていない
9月26日:
多武蔵野に 占へかた焼き 真実にも 告らぬ君が名 卜に出にけり
鹿の肩を焼いて占ったら、君の名が現れた
9月25日:
多摩川に 晒す手作り さらさらに 何そこの児の ここだ愛しき
新しく晒す布のようにこの子は愛しい
9月24日:
足柄の 箱根の嶺ろの 和草の 花つ妻なれや 紐解かず寝む
和草の花のように見るだけの妻か紐解かず寝る
9月23日:
足柄の 土肥の河内に 出づる湯の 世にもたよらに 児ろが言はなくに
二人の仲が絶えると、児は言わぬが不安だ
9月22日:
ま愛しみ さ寝に我は行く 鎌倉の 美奈の瀬川に 潮満つなむか
可愛い妹と寝に行く、稲瀬川に潮が満ちてるだろうか
9月21日:
鎌倉の 見越しの崎の 岩くえの 君が悔ゆべき 心は持たじ
貴方を後悔させる気持ちは私にない
9月20日:
我が背子を 大和へ遣りて まつしだす 足柄山の 杉の木の間か
大和に遣った夫を杉の木の間に立って待つ
9月19日:
足柄の 彼面此面に 刺す罠の かなる間しづみ 児ろ我れ紐解く
罠をそこここにかける合間に我と娘は寝た
9月18日:
さ寝らくは 玉の緒ばかり 恋ふらくは 富士の高嶺の 鳴沢のごと
供に寝たのは一瞬だが、恋心は鳴沢の落石のようだ
9月17日:
霞ゐる 富士の山辺に 我が来なば いづち向きてか 妹が嘆かむ
霧の富士山麓で、妹は私を探して嘆くだろうか
9月16日:
富士の嶺の いや遠長き 山道をも 妹がりとへば 日に及ばず来ぬ
富士山の遠い路も妹に会うため、日を置かず来る
9月15日:
天の原 富士の柴山 木の暗の 時移りなば 逢はずかもあらむ
今夜会えぬなら二度と会えぬかも
9月14日:
信濃なる 須賀の荒野に ほととぎす 鳴く声聞けば 時すぎにけり
荒野でホトトギスの鳴き声を聞くと時が過ぎたと知る
9月13日:
筑波嶺に 雪かも降らる 否をかも 愛しき児ろが 布乾さるかも
筑波嶺に雪が降ったか、それとも妹が衣干したか
9月12日:
筑波嶺の 新桑繭の 衣はあれど 君が御衣し あやに着欲しも
筑波嶺の新繭の服より、貴方の服を着たい
9月11日:
夏麻引く 海上潟の 沖つ渚に 船はとどめむ さ夜更けにけり
夜は更けた、海上潟の沖の州に船を泊めよう
9月10日:
あしひきの 山路は行かむ 風吹けば 波の塞れる 海路は行かじ
山路を行こう、風吹けば波が道を遮る海路は行かず
9月9日:
母父も 妻も子どもも 高々に 来むと待ちけむ 人の悲しさ
父母や妻子が待っているだろう人が倒れて悲しい
9月8日:
衣手 葦毛の馬の 嘶え声 情あれかも 常ゆ異に鳴く
馬の鳴き声が、王を偲んでいるからか常と違っている
9月7日:
馬買はば 妹徒歩ならむ よしゑやし 石は踏むとも 我はふたり行かむ
馬を買わずに石を踏んでも二人で歩いて行こう
9月6日:
まそ鏡 持てれど我れは 験なし 君が徒歩より なづみ行く見れば
澄んだ鏡も徒歩で苦難している君の役には立たない
9月5日:
泉川 渡り瀬深み 我が背子が 旅行き衣 濡れひたむかも
泉川の瀬が深く、夫の旅の衣が濡れてしまった
9月4日:
川の瀬の 石踏み渡り ぬばたまの 黒馬の来る夜は 常にあらぬかも
川の石を黒馬で踏んで、夫は毎夜は来ぬか
9月3日:
聞かずして 黙然あらましを 何しかも 君が正香を 人の告げつる
噂で、貴方の様子を聞かなければよかった
9月2日:
たらちねの 母にも言はず 包めりし 心はよしゑ 君がまにまに
母にも言わなかった私の心、えーいもう君のもの
9月1日:
今更に 恋ふとも君に 逢はめやも 寝る夜をおちず 夢に見えこそ
恋しても君は会わないなら、毎夜欠かさず夢に出て
8月31日:
衣手に あらしの吹きて 寒き夜を 君来まさずは 独りかも寝む
寒い夜、貴方が来ないなら私は寂しく一人で寝る
8月30日:
ひとり寝る 夜を算へむと 思へども 恋の繁きに 情利もなし
独り寝の夜を数えようとしたが恋しくて心が乱れた
8月29日:
我が心 焼くも我れなり はしきやし 君に恋ふるも 我が心から
心を焼くのも君に恋するのも、ああ私の心だ
8月28日:
明日香川 瀬々の珠藻の うち靡き 心は妹に 寄りにけるかも
明日香川の藻のように私の心は妹に靡いている
8月27日:
年渡る までにも人は 有りといふを いつの間にぞも 我が恋ひにける
会ったばかりなのに貴方に恋してしまった
8月26日:
斯くのみし 相思はざらば 天雲の 外にそ君は あるべくありける
貴方は私とは縁のない世界にあるべきなのに
8月25日:
磯城島の 大和の国は 言霊の 幸はふ国ぞ ま幸くありこそ
言葉の霊が幸を運ぶ、この言葉で君に幸あれ
8月24日:
磯城島の 日本の国に 人二人 ありとし思はば 何か嘆かむ
恋しい人が二人いれば悲しんで嘆くこともない
8月23日:
天なるや 月日のごとく 我が思へる 君が日に異に 老ゆらく惜しも
月や日のようにな君が老いてゆくのは惜しい
8月22日:
阿胡の海の 荒礒の上の さざれ波 我が恋ふらくは やむ時もなし
荒磯の波のように我が恋は止む時がない
8月21日:
相坂を うち出でて見れば 淡海の海 白木綿花に 波立ちわたる
琵琶湖見れば、一面に白波が立っている
8月20日:
山辺の 五十師の御井は おのづから 成れる錦を 張れる山かも
山辺の五十師の御井は自然の錦を広げた山だ
8月19日:
み吉野の 滝もとどろに 落つる白波 留まりにし 妹に見せまく 欲しき白波
吉野の滝の白い波、都にいる妹に見せたいと思う
8月18日:
月日は 行きかはれとも 久に経る 三諸の山の 離宮地
年月は変わっても三諸山の離宮は変わらない
8月17日:
さざれ波 浮きて流るる 泊瀬川 寄るべき礒の 無きが寂しさ
漣が立つ泊瀬川は寄り易い磯がないのがさみしい
8月16日:
独りのみ 見れば恋しみ 神奈火の 山の黄葉 手折りけり君
紅葉を独りで見ていると君恋しさに枝を折って来た
8月15日:
豊国の 企救の高浜 高々に 君待つ夜らは さ夜更けにけり
君の帰りを今か今かと待って夜が更けてしまった
8月14日:
豊国の 企救の長浜 行き暮し 日の暮れ行けば 妹をしぞ思ふ
長浜を歩いて行って日が暮れた、妻が思い出される
8月13日:
十月 しぐれの雨に 濡れつつか 君が行くらむ 宿か借るらむ
十月の時雨の中を濡れて旅を続けているだろうか?
8月12日:
あしひきの 片山雉 立ちゆかむ 君におくれて うつしけめやも
君が行った後に残されて正気ではいられない
8月11日:
浦廻漕ぐ 熊野舟着き めづらしく かけて思はぬ 月も日もなし
入江を漕ぐ熊野の舟のように貴方を思わぬ日はない
8月10日:
能登の海に 釣する海人の 漁火の 光りにい行け 月待ちがてり
漁火の光を頼りに行きなさい、月も待ちがら
8月9日:
鈴鹿川 八十瀬渡りて 誰が故か 夜越えに越えむ 妻もあらなくに
夜に鈴鹿川の瀬を越すのは妹に会う為
8月8日:
いで我が駒 早く行きこそ 真土山 待つらむ妹を 行きて早見む
馬よ速く走れ、私を待つ妹に早く逢いたい
8月7日:
愛しきやし 然ある恋にも ありしかも 君におくれて 恋しく思へば
後に残って初めて、君を恋していたとわかった
8月6日:
年も経ず 帰り来なむと 朝影に 待つらむ妹し 面影に見ゆ
早く帰ると思って待つ痩せた妹が目に浮かぶ
8月5日:
遠くあれば 姿は見えね 常のごと 妹が笑まひは 面影にして
離れ住んでいるのでいつも妹の笑顔は面影で見る
8月4日:
巻向の 痛師の山に 雲居つつ 雨は降れども 濡れつつぞ来し
雨の中を濡れながらやって来た
8月3日:
ひさかたの 雨の降る日を わが門に 蓑笠着ずて 来る人や誰
雨なのに雨具も付けず私の門に来る人は誰?
8月2日:
雨も降り 夜も更けにけり 今さらに 君去なめやも 紐解き設けな
君は帰らないだろうから紐を解いて寝る支度をしよう
8月1日:
ただひとり 寝れど寝かねて 白たへの 袖を笠に着 濡れつつぞ来し
眠れずに袖を笠にして濡れながら逢いに来た
7月31日:
相見まく 欲りすればこそ 君よりも 我れそまさりて いふかしみすれ
逢いたいが貴方よりも私の方が気がかりに思う
7月30日:
人目多み 直に逢はずて けだしくも 我が恋ひ死なば 誰が名ならむも
もし私が恋で死んだら誰が得するだろうか
7月29日:
たらちねの 母が呼ぶ名を 申さめど 路行く人を 誰れと知りてか
母がつけた名を言いたいが君が誰か分からない
7月28日:
紫は 灰さすものそ 海石榴市の 八十の巷に 逢へる児や誰れ
紫草は椿の灰を指す、椿の市で会った人の名は?
7月27日:
紫草を 草と別く別く 伏す鹿の 野は異にして 心は同じ
離れていても我ら夫婦の心は一つ
7月26日:
おのれゆゑ 詈らえて居れば 青馬の 面高夫駄に 乗りて来べしや
叱られている人が雑役の馬に揚揚と乗ってくる
7月25日:
馬柵越しに 麦食む駒の 罵らゆれど なほし恋しく 思ひかねつも
親にお怒られても恋しくてじっとしていられない
7月24日:
なかなかに 人とあらずは 桑子にも ならましものを 玉の緒ばかり
少しの間でも物を思わない蚕にでもなりたい
7月23日:
朝影に 我が身はなりぬ 玉かぎる ほのかに見えて 去にし児故に
少しだけ見た娘に恋をして痩せてしまったい
7月22日:
丹波道の 大江の山の 真玉葛 絶えむの心 我が思はなくに
二人の恋が絶えるようにとは思わない
7月21日:
忘れ草 我が紐に付く 時となく 思ひ渡れば 生けりともなし
忘れ草を私の紐に付け、恋を忘れよう
7月20日:
君待つと 庭にし居れば うち靡く 我が黒髪に 霜ぞ置きにける
君を庭で待っていたら私の黒髪に霜が落ちていた
7月19日:
夕置きて 朝は消ゆる 白露の 消ぬべき恋も 我れはするかも
朝には消える白露のような恋を私はするかも
7月18日:
佐保川の 川波立たず 静けくも 君に副ひて 明日さへもがも
佐保川の流れは静か、明日も君の側で過ごしたい
7月17日:
月夜良み 門に出で立ち 足占して 行く時さへや 妹に逢はざらむ
足占いして出かけても妹には会えないかも
7月16日:
ひさかたの 天つみ空に 照る月の 失せむ日にこそ わが恋止まめ
天の月が無くなる日まで私の恋は止まらない
7月15日:
夕月夜 暁闇の おぼぼしく 見し人故に 恋ひ渡るかも
暗闇でぼんやり見ただけなのに恋してしまった
7月14日:
あしひきの 山より出づる 月待つと 人には言ひて 妹待つ我れを
月を待つと人には言ったが、妹を待つ私だ
7月13日:
水を多み 高田に種蒔き 稗を多み 拓擢えし業そ 我がひとり寝る
水多い高田に種を蒔き、稗を抜くのは生業だ
7月12日:
港入りの 葦別け小舟 障り多み 今来む我れを 淀むと思ふな
心は変わっていないが
障りが多くて
会いに行けない
7月11日:
石上 布留の高橋 高高に 妹が待つらむ 夜ぞ更けにける
妹が私を待っているだろうが夜が更けた
7月10日:
針はあれど 妹しなければ 付けめやと 我れを煩まし 絶ゆる紐の緒
妹がいないので付けられまいと私を悩ます紐の緒だ
7月9日:
紅の 薄染め衣 浅らかに 相見し人に 恋ふるころかも
全然気にとめていなかった人が今は恋しい
7月8日:
うつせみの 常の言葉と 思へども 継ぎてし聞けば 心迷ひぬ
普段の言葉でも何度も聞くと心が迷う
7月7日:
夢かと 心は迷ふ 月数多 離れにし君が 言の通へば
幾月も途絶えた君の頼りを受け取って心が迷う
7月6日:
おのが齢の 衰へぬれば 白栲の 袖のなれにし 君をしそ思ふ
年を取った今、昔馴染みの君の事を思う
7月5日:
明日の日は その門行かむ 出でて見よ 恋ひたる姿 あまた著るけむ
明日は門の前を通る、恋して痩せた私の姿を見て
7月4日:
思ひにし 余りにしかば 為方を無み 我は言ひてき 忌むべきものを
思い余って出してはならぬ恋人の名を出してしまった
7月3日:
今は吾は 死なむよわが背 恋すれば 一夜一日も 安けくも無し
我が夫よ、恋はつらいので私は死ぬかも
7月2日:
味さはふ 目は飽かざらね 携り 言問はなくも 苦しかりけり
眼に見るだけで話をしないのはつまらない
7月1日:
おのがしし 人死にすらし 妹に恋ひ 日にけに痩せぬ 人に知らえず
人に知られず私は妹に恋して痩せて死ぬらしい
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