(JAXA HPより)
万葉集一日一首
(2005年4月1日〜6月30日)

その日の歌を掲載しています。
凡そ、歌番号の若い方から掲載しています。
歌をクリックすると解釈文を見ることが出来ます。

(JAXA HPより)

日付 一口解釈
6月30日:  うらぶれて 離れにし袖を またまかば 過ぎにし恋い 乱れ来むかも 別れた恋人を又手に巻けば過ぎた恋が蘇るかも
6月29日:  悔しくも 老いにけるかも わが背子が 求むる乳母に 行かましものを 若ければ背子が求める乳母になろうものに
6月28日:  みどり子の 為こそ乳母は 求むと言へ 乳飲めや君が 乳母求むらむ 乳飲まぬ君が乳母を求めるのは何故?
6月27日:  手弱女は 同じ情に 暫しくも 止む時もなく 見てむとそ思ふ 手弱女の私もいつも君を見ていたいと思う
6月26日:  死なむ命 ここは思はず ただしくも 妹に逢はざる 事をしぞ思ふ 死ぬにも妹に会わないことが気にかかる
6月25日:  玉かつま 逢はむといふは 誰れなるか あへる時さへ 面隠しする 会いたくても会うと顔を隠している
6月24日:  あかねさす 日の暮れぬれば 術をなみ 千度嘆きて 恋ひつつぞをる 日が暮れるとため息ついて君を恋しているく
6月23日:  聞きしより 物を思へば 我が胸は 割れて砕け 利心もなし 噂を聞いて胸が張り裂け気もそぞろになったく
6月22日:  朝去きて 夕は来ます 君ゆゑに ゆゆしくも 吾は嘆きつるかも 朝行き夕来る君、人妻ゆえに私は畏れ嘆く
6月21日:  天地に 少し至らぬ 大夫と 思ひし我れや 雄心もなき 昔の勇者も今は男心もなくなった
6月20日:  山川の 水陰に生ふる 山菅の やまずも妹は 思ほゆるかも 水陰の山菅のように止むことなく妹を思う
6月19日:  新墾の 今作る道 さやかにも 聞きてけるかも 妹が上のことを 愛しい妹のことを清かに聞いた
6月18日:  愛しみ わが思ふ妹を 人皆の 行くごと見めや 手に巻かずして 愛しい妻を行きずりの人のようには見れない
6月17日:  我が背子が 朝明の姿 よく見ずて 今日の間を 恋ひ暮らすかも 朝帰る我が夫を一日恋して暮らしている
6月16日:  幾多も 降らぬ雨ゆゑ わが背子が 御名の幾許 滝もとどろに 少ししか会わないのに夫の名前は広まってしまった
6月15日:  斯くだにも 妹を待ちなむ さ夜更けて 出で来し月の かたぶくまでに 夜更けに出る月が傾くまでも妹を待とう
6月14日:  うらぶれて 物は思はじ 水無瀬川 ありても水は 行くといふものを 水無川も時が立てば水が流れる
6月13日:  眉根掻き 鼻ひ紐解け 待てりやも いつかも見むと 恋ひ来し我れを 眉を掻き、くしゃみをして待っていましたか?
6月12日:  明けぬべく 千鳥しば鳴く 白栲の 君が手枕 いまだ飽かなくに 朝になったが、未だわが君の手枕の中にいたい
6月11日:  思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥の尾の 長きこの夜を 長い夜、恋しい思いに耐えられない
6月10日:  暁と 鶏は鳴くなり よしゑやし 独り寝る夜は 明けば明けぬとも 鶏の声、独り寝の私には朝も夜も無関係
6月9日:  人言を 繁みと君を 鶉鳴く 人の古家に 語らひて遣りつ 噂が激しいので君と鶉鳴く古い家で会って返した
6月8日:  隠処の 沢たづみなる 岩根ゆも 通して思ふ 君に逢はまくは 私はひたすら君に逢いたい
6月7日:  山吹の にほへる妹が 朱華色の 赤裳の姿 夢に見えつつ 山吹のように美しい君の赤裳の姿を夢を見た
6月6日:  さ寝がには 誰れとも寝めど 沖つ藻の 靡きし君が 言待つ我れを 藻のように言葉を磨いた君を誘いを待っている
6月5日:  神名火の 浅小竹原の うるはしみ わが思ふ君が 声の著るけく 私が恋する人の声が聞こえた
6月4日:  道の辺の いつ柴原の いつもいつも 人の許さむ 言をし待たむ 何時でも妹が求婚をOKする言葉を待っている
6月3日:  蘆垣の 中の似児草 にこやかに われと笑まして 人に知らゆな 私と一緒に笑って人に気ずかれないように
6月2日:  あしひきの 山沢恵具を 採みに行かむ 日だにも逢はせ 母は責むとも エグを摘みに行く日だけでも君に逢いたい
6月1日:  朝柏 閏八川辺の 小竹の芽の 偲ひて寝れば 夢に見えけり 小竹の芽のような君を思って寝たら夢に出た
5月31日:  あぢの住む 渚沙の入江の 荒礒松 吾を待つ児らは ただ一人のみ  荒磯の松のように私を待つ娘はあなた一人
5月30日:  駅路に 引舟渡し 直乗りに 妹は心に 乗りにけるかも 妹の気持ちは真っ直ぐ私の心に乗っている
5月29日:  志賀の海人の 火気焼き立て 焼く塩の 辛き恋をも われはするかも 塩のような辛い恋を私はしている
5月28日:  潮満てば 水泡に浮かぶ 細砂にも われは生けるか 恋ひは死なずて 水泡に浮かぶ砂のように私ははかなく生きている
5月27日:  白波の 来寄する島の 荒礒にも あらましものを 恋ひつつあらずは 恋しく思わず白波寄せる荒磯になればよかった
5月26日:  高山の 岩本激ち ゆく水の 音には立てじ 恋ひて死ぬとも 例え死んでも他人に知れないようにしよう
5月25日:  妹が名も 我が名も立たば 惜しみこそ 富士の高嶺の 燃えつつ渡れ 名を惜しむので燃える恋も外には出さない
5月24日:  窓越しに 月おし照りて あしひきの 嵐吹く夜は 君をしそ思ふ 月が射し入る夜、山に嵐が吹くと君を思う。
5月23日:  夕月夜 暁闇の 朝影に 我が身はなりぬ 汝を思ひかねて 思いに耐えかねて朝日の影のように痩せてしまった
5月22日:  あしひきの 山鳥の尾の 一峯越え 一目見し児に 恋ふべきものか 一目見ただけの児にこんなにも恋をする
5月21日:  妹が門 行き過ぎかねつ ひさかたの 雨も降らぬか 其を因にせむ 妹の家の前を素通りできない
5月20日:  彼方の 赤土の小屋に 小雨降り 床さへ濡れぬ 身に副へ吾妹 小雨で濡れた私の体に寄り添え我が妹よ
5月19日:  君に恋ひ 寐ねぬ朝明に 誰が乗れる 馬の足の音ぞ 我れに聞かする 眠れぬ朝明け、誰が乗るか馬の足音が聞こえる
5月18日:  馬の音の とどともすれば 松蔭に 出でてそ見つる けだし君かと 馬の音に、もしや君かと思って外に出た
5月17日:  難波人 葦火焚く屋の 煤してあれど 己のが妻こそ 常めづらしき 我が妻は葦を焚く家のように煤けているが新鮮だ
5月16日:  宮材引く 泉の杣に 立つ民の 息ふ時なく 恋ひわたるかも  宮材を切る山の民のように休みなく恋し続ける
5月15日:  燈の 影にかがよふ うつせみの 妹が笑まひし 面影に見ゆ 燈に照らされた妹の面影が浮かんでくる
5月14日:  時守の 打ち鳴す鼓 数み見れば 時にはなりぬ 逢はなくも怪し  時守の時間は約束の時になったのに何故来ない
5月13日:  朝影に 我が身はなりぬ 韓衣 裾の合はずて 久しくなれば 妹に久しく会わないので朝影のように痩せてしまった
5月12日:  月夜よみ 妹に逢はむと 直道から 我れは来れども 夜そ更けにける きれいな月夜、妹に会いに来て夜が更けた
5月11日:  奥山の 真木の板戸を 音速み 妹があたりの 霜の上に寝ぬ 戸は叩かずに妹の家の周りの霜の上に寝た
5月10日:  眉根掻き 下いふかしみ 思へるに 古人を 相見つるかも 眉を掻いたら予期しなかった昔なじみに会った
5月9日:  夕卜にも 占にも告れる 今夜だに 来まさぬ君を 何時とか待たむ 占いでは今夜来ると出たが君は未だ来ない
5月8日:  ぬばたまの わが黒髪を 引きぬらし 乱れてなおも 恋ひわたるかも 黒髪も心も乱れて恋し続ける
5月7日:  行かぬ吾を 来むとか夜も 門閉さず あはれ吾妹子 待ちつつあるらむ 私は行かないのに門を閉めずに待っているだろう
5月6日:  あづきなく 何の狂言 今更に 小童言する 老人にして 年老いても、我を忘れて言ったことを悔いる
5月5日:  面形の 忘れてあらば あづきなく 男じものや 恋ひつつ居らむ 片思い、顔を忘れられるのならくよくよしない
5月4日:  早行きて 何時しか君を 相見むと 思ひし情 今そ和ぎぬる 会いたくて急いで行った、顔を見て心和んだ
5月3日:  面忘れ だにも得為やと 手握りて 打てども懲りず 恋といふ奴 顔を忘れようとゲンコツで打っても何度も出てくる
5月2日:  偽りも 似つきてそ為る いつよりか 見ぬ人恋ふと 人の死する 未だ会ったこともない人が恋焦がれて死ぬなんて
5月1日:  かくのみし 恋ひば死ぬべみ たらちねの 母にも告げつ 止まず通はせ 母に話したから休まず通って
4月30日:  花ぐはし 葦垣越しに ただ一目 相見し児故 千遍嘆きつ 葦垣越しに一目見ただけなのに千度も嘆いてる
4月29日:  人も無き 古りにし郷に ある人を 愍くや君が 恋に死なする 寂しい里に住む妹を貴方は恋に死なそうとする
4月28日:  玉垂の 小簾の垂簾を 行きかてに 寝は寝さずとも 君は通はせ 供に寝れなくても君は来て欲しい
4月27日:  相見ては 面隠さるる ものからに 継ぎて見まくの 欲しき君かも 顔を会わせるともじもじするのに又逢いたい
4月26日:  かくばかり 恋むものそと 思はねば 妹が手本を 纒ぬ夜もありき 恋つのる前は妹の手を枕に寝ない夜もあった
4月25日:  思はぬに 到らば妹が 嬉しみと 笑まむ眉引き 思ほゆるかも 妹の家に突然行けば喜ぶ妹の顔が目に浮かぶ
4月24日:  振分けの 髪を短み 青草を 髪に綰らむ 妹をしそ思ふ 短い童女の髪に草を足して長くする妹が恋しい
4月23日:  凡ならば 誰が見むとかも ぬばたまの 我が黒髪を 靡けて居らむ 黒髪を靡かす理由は貴方に見せるためです
4月22日:  わが背子が その名告らじと たまきはる 命は棄てつ 忘れたまふな 死んでも貴方の名前は告げません
4月21日:  あらたまの 伎倍が竹垣 網目ゆも 妹し見えなば われ恋ひめやも 竹垣の網目の隙間からでも妹を見たい
4月20日:  誰れそこの 我が屋戸に来喚ぶ たらちねの 母に嘖はえ 物思ふわれを 母に怒られて塞いでいる私を呼ぶ人は誰?
4月19日:  刈薦の 一重を敷きて さ寝れども 君とし寝れば 寒けくもなし 薦のムシロ一枚でも、貴方と寝るなら寒くない
4月18日:  奥山の 真木の板戸を 押し開き しゑや出で来ね 後は何せむ 板戸を空けて外に出よう、後はなんとかなるだろう
4月17日:  たらちねの 母に障らば いたづらに 汝もわれも 事成るべし 母のことを気に掛けないで先に進もう
4月16日:  隠口の 豊泊瀬道は 常滑の 恐き道ぞ 恋ふらくはゆめ 道が滑りやすい、恋する人は気を付けて通れ
4月15日:  夕されば 床の辺去らぬ 黄楊枕 何しか汝れが 主待ちかたき 夕方、ツゲ枕は何故主を持ち続けぬのだろう
4月14日:  朝づく日 向ふ黄楊櫛 奮りぬれど 何しか君が 見れど飽かざらむ 古い間柄だが、君を見飽きることがない
4月13日:  たらつねの 母が養ふ蚕の 繭隠り 隠れる妹を 見むよしもがも 繭のように籠っている妹の顔が見たい
4月12日:  山ぢさの 白露しげみ うらぶるる 心も深く わが恋止まず 心が沈んで私の恋は止むことがない
4月11日:  秋柏 潤和川辺の 小竹の目の 人には逢わね 君にあへなく 他人は会わなくても君には逢いたい
4月10日:  わが背子に わが恋ひ居れば わが屋戸の 草さへ思ひ うらぶれにけり 私の恋に家の草も一緒に沈んでいる
4月9日:  ぬばたまの 黒髪山の 山草に 小雨降りしき しくしく思ほゆ 小雨のように恋する人を止まずに思う
4月8日:  大地も 取り尽さめど 世の中の 尽しえぬものは 恋にしありけり どんなに取去っても恋心はなくならない
4月7日:  大船の 香取の海に 碇おろし 如何なる人か 物思はざらむ どんな人も物を思わずには居られない
4月6日:  水の上に 数書く如き わが命 妹に逢はむと 祈誓ひつるかも はかない命の私だが、妻に会う誓いを立てた
4月5日:  宇治川の 水泡逆巻まき 行く水の 事反らずそ 思ひ始めてし 川の流れのように、恋した心は戻せない
4月4日:  山科の 木幡の山を 馬はあれど 歩ゆ我が来し 汝を思ひかね 逢いたくて山を歩いて越えてきた
4月3日:  月見れば 国は同じぞ 山隔なり 愛し妹は 隔ちたるかも 同じ月を見ていても愛しい妹は遠く離れて
4月2日:  石上 布留の神杉 神さびし 恋をもわれは 更にするかも 年を取ったけれど、新たな恋を私はするかも
4月1日:  恋ふること 慰めかねて 出で行けば 山をも川も 知らず来にけり 恋心を押さえきれず、山も川も見ず来てしまった




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