万葉集一日一首
  (2004年4月1日〜6月30日)

その日の歌を掲載しています。
凡そ、歌番号の若い方から掲載しています。
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日付 一口解釈
6月30日:  春日山 おして照らせる この月は 妹が庭にも さやけかりけり 月が私も妻の庭もさやけく照らしている
6月29日:  天の海に 雲の波立ち 月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ 広広とした夜空を月が星の間を漕いでゆく
6月28日:  眉のごと 雲居に見ゆる 阿波の山 懸けて漕ぐ舟 泊り知らずも 舟が見えるが何処に泊るのであろうか
6月27日:  御民我れ 生ける験あり 天地の 栄ゆる時に 遭へらく思へば 天も地も栄えている時に生まれ幸せだ
6月26日:  斯くしつつ 遊び飲みこそ 草木すら 春は生ひつつ 秋は散り行く 草木も春には生まれ秋には散る、飲んで遊ぼう
6月25日:  振仰けて 若月見れば 一目見し 人の眉引き 思ほゆるかも 三日月を見ると一目見た人を思い出す
6月24日:  ぬば玉の 夜霧の立ちて おほほしく 照れる月夜の 見れば悲しさ 月がかすんで見えると悲しくなる
6月23日:  かり高の 高円山を 高みかも 出で来る月の 遅く照るらむ 山が高いから月の出も遅いのだろう
6月22日:  をのこやも 空しかあるべき 万代に 語りつぐべき 名は立てずして 男なら名を立て、語り継がれたい
6月21日:  丈夫の 行くといふ道そ おほろかに 思ひて行くな 丈夫の伴 勇者よ、軽軽しく思って行くな
6月20日:  千万の 軍なりとも 言挙げせず 取りて来ぬべき 男とぞ思ふ 相手が何人いても戦ってくるのが武将だ
6月19日:  須臾も 行きて見てしか 神名火の 淵は浅せにて 瀬にかなるらむ 川は浅くなって瀬になっているだろうか
6月18日:  ますらをと 思へる我れや 水茎の 水城の上に 涙拭はむ 勇者の私も別れは悲しい
6月17日:  倭道の 吉備の兒嶋を 過ぎて行かば 筑紫の兒嶋 思ほえむかも 吉備の児島で、筑紫の児島を思い出す
6月16日:  大和道は 雲隠りたり 然れども わが振る袖を 無礼しと思ふな 私が振る袖を無礼と思わないで欲しい
6月15日:  凡ならば かもかも為むを 恐みと 振り痛き袖を 忍びてあるかも お別れの手を振りたいが隠している
6月14日:  わが背子に 恋ふれば苦しい 暇あらば 拾いて行かむ 恋忘貝 恋を忘れるために貝を拾って行こう
6月13日:  隼人の 湍門の磐も 年魚走る 吉野の滝に なほ及かずけり 隼人の大岩も、吉野の滝には及ばない
6月12日:  時つ風 吹くべきなりぬ 香椎潟 潮干の浦に 玉藻刈りてな 潮の引いた海岸で美しい藻を刈ろう
6月11日:  いざ子ども 香椎の潟に 白妙の 袖さえぬれて 朝菜摘みてむ さあ皆さん、袖を濡らして朝菜を摘もう
6月10日:  梅柳 過ぐらく惜しみ 佐保のうちに 遊びし事を 宮もとどろに 梅や柳の見頃が過ぎるのが惜しかった
6月9日:  須磨の海女の 塩焼き衣の なれなばか 一日も君を 忘れて思はむ 貴方を一日も思わない日がない
6月8日:  風吹けば 浪か立たむと さもらひに つだの細江に 浦がくり居り 風が強い、波が収まるのを待っている
6月7日:  島隠り 我がこぎ来れば ともしかも 大和へ上る 真熊野の船 熊野の舟が見えた、嬉しい
6月6日:  玉藻刈る 辛荷の島に 島廻する 鵜にしもあれや 家思はざらむ 島を回る鵜ではないので、私は家を思う
6月5日:  明石潟 潮干の道を 明日よりは 下笑ましけむ 家近づけば 家が近い!、心が自然に笑ってくる
6月4日:  印南野の 浅茅押しなべ さ寝る夜の 日長くしあれば 家し偲はゆ 茅の上で寝る日が多いので、家が懐かしい
6月3日:  沖つ波 辺波静けみ 漁りすと 藤江の浦に 舟ぞ騒ける 波は静か、漁師は賑やか
6月2日:  朝凪に 楫の音きこゆ 御食つ国 野島の海人の 船にしあるらし 櫓の音が聞こえる、野島の漁師の船だ
6月1日:  あしひきの 山にも野にも 御狩人 得物矢手挟み 散動きたり見ゆ 狩をする人が矢を持って騒いでいる
5月31日:  ぬばたまの 夜の更けゆけば 久木生ふる 清き河原に 千鳥しば鳴く 夜、清い河原で千鳥がしきりに鳴いている
5月30日:  み吉野の 象山のまの木ぬには ここだも騒ぐ 鳥の声かも 山の繁みでは多くの鳥が鳴いている
5月29日:  若の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴鳴き渡る 潮が満ちると、葦を目指して鶴が飛んでゆく
5月28日:  沖つ島 荒礒の玉藻 潮干満ち い隠りゆかば おもほえむかも 玉藻が潮に隠れたら、なつかしく思うだろう
5月27日:  あかねさす 日並べなくに わが恋は 吉野の川の 霧に立ちつつ 私の恋は吉野川の霧となって広がっている
5月26日:  千鳥鳴く み吉野川の 川音なす 止む時無しに 思ほゆる君 川音のように休みなく貴方を思っている
5月25日:  滝の上の 三船の山は  畏けど 思ひ忘るる 時も日も無し 山は畏れ多いが妻を忘れた時はない
5月24日:  泊瀬女の 造る木綿花 み吉野の 滝の水沫に 咲きにけらずや 木綿の花が吉野の滝の水泡として咲いている
5月23日:  山高み 白木綿花に おちたぎつ 瀧の河内は 見れど飽かぬかも 滝の水が木綿の花のように湧き上がる
5月22日:  毎年に かくも見てしか み吉野の 清き河内の たぎつ白波 吉野の川の清らかな白波を毎年見たい
5月21日:  布施おきて 我れはこひのむ あざむかず ただに率ゆきて 天道知らしめ この子を真っ直ぐ天に連れて行って欲しい
5月20日:  稚ければ 道行き知らじ まひはせむ したべの使 負ひて通らせ 謝礼するので黄泉の国へ背負って行ってくれ
5月19日:  倭文纒 数にも在らぬ 身にはあれど 千年にもがと 思ほゆるかも 数えるほどの命でないが、千年生きたい
5月18日:  水沫なす 微き命も 栲縄の 千尋にもがと 願い暮しつ か弱い命だが、丈夫を願って暮している
5月17日:  荒栲の 布衣をだに 着せがてに かくや嘆かむ 為むすべを無み 荒い繊維の服でさも着させてやれない
5月16日:  富人の 家の子どもの 着る身無なみ 腐し棄つらむ きぬ綿らはも 裕福な家では、絹綿の材料も腐らすのだろう
5月15日:  すべもなく 苦しくあれば 出で走り いななと思へど 児らにさやりぬ 逃げ出したいが、子供を思うと出来ない
5月14日:  なぐさむる 心はなしに 雲隠り 鳴き行く鳥の 音のみし泣かゆ 鳥のように、見えないところで鳴いている
5月13日:  世間を 憂しとやさしと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば 世の中が嫌でも、鳥でないので飛び立てない
5月12日:  一世には 二遍見えぬ 父母を 置きてや長く 吾が別れなむ 父母を置いて、私は長く分かれるのだろうか
5月11日:  出でて行きし 日を数へつつ 今日今日と 吾を待たすらむ 父母らはも 私が出発してからの日を数えている父母だ
5月10日:  家に在りて 母がとり見ば 慰さむる 心はあらまし 死なば死のとも 家にいて母が看ているなら慰められもしょう
5月9日:  常知らぬ 道の長手を くれくれと いかにか行かむ かりてはなしに 知らない道を食べ物も持たず、どう行こうか?
5月8日:  たらちしの 母が目見ずて おほほしく 何方向きてか 吾が別るらむ 母にも会わず、どうしていいかわからない
5月7日:  朝露の 消易きわが身 他国に 過ぎかてぬかも 親の目を欲り 生前に、一目でも親に会いたい
5月6日:  国遠き 路の長手を おぼぼしく 今日や 過ぎなむ 言問もなく 故郷は遠い、私はどうなってしまうのか
5月5日:  松浦川 七瀬の淀は よどむとも われはよどまず 君をし待たむ 川は淀んでも、私は淀まず待っている
5月4日:  春されば 吾家の里の川門には 鮎児さ走る 君待ちがてに 春、川私の里の川では若鮎が走っている
5月3日:  若鮎釣る 松浦の川の 川波の 並みにし思はば われ恋ひめやも 普通に思うのなら、こんなに慕いはしない
5月2日:  遠つ人 松浦の川に 若鮎釣る 妹が手本を われこそ巻かめ 鮎を釣る貴方の手を私は取りたい
5月1日:  松浦なる 玉島川に 鮎釣ると 立たせる子らが 家路知らずも 鮎を釣る、貴方達の家を知りたいが判らない
4月30日:  松浦川 川の瀬光り 鮎釣ると 立たせる妹が 裳の裾濡れぬ 川で魚を釣ったら、貴方の服が濡れていた
4月29日:  玉島の この川上に 家はあれど 君を恥しみ 顕さずありき 恥ずかしくて、名を言わなかった
4月28日:  漁りする 海人の児どもと 人は言へど 見るに知らえぬ 良人の子と 貴方が良家の子供だとはすぐにわかった
4月27日:  梅の花 夢に語らく 風流びたる 花と我思ふ 酒に浮べこそ 梅の花は風流な花だ、酒に浮かべたい
4月26日:  わが園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れ来るかも 庭に梅の花が舞う、天の雪が来たのだろうか
4月25日:  梅の花 今盛りなり 思ふどち かざしにしてな 今盛りなり 梅の花は今が満開だ
4月24日:  春されば まづ咲く宿の 梅の花 独り見つつや 春日暮らさむ 春が来たら、梅を見て春の一日を過ごそう
4月23日:  正月立ち 春の来たらば 斯くしこそ 梅を招きつつ 楽しき終へめ 春が来たなら、梅を招いて楽しく過ごそう
4月22日:  銀も 金も 玉も何せむに まされる宝 子にしかめやも 銀も金も何になろう、子供に優る宝はない
4月21日:  ひさかたの 天路は遠し なほなほに 家に帰りて 業を為まさに 天への道は遠い、あきらめて家に帰りなさい
4月20日:  大野山 霧立ちわたる 我が嘆く おきその風に 霧立ちわたる 私のため息で、霧が立ち上ってゆく
4月19日:  妹が見し 楝の花は 散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干なくに 私の涙が乾かないうちに、花は散る
4月18日:  悔しかも かく知らませば あをによし 国内ことごと 見せましものを 亡くなると知っていれば国内全部見せたのに
4月17日:  愛しきよし かくのみからに 慕い来し 妹が情の 術もすべなさ ああ愛しい妻よ、亡くなってしまった
4月16日:  家に行きて 如何にか吾がせむ 枕ずく 妻屋さぶしく 思ほゆべしも 妻のいない家では、帰っても何をしようか
4月15日:  世の間は 空しきものと 知る時し いよよますます 悲しかりけり 世の中を、ますます悲しく感じて来た
4月14日:  末若み 花咲き難き 梅を植ゑて 人の言繁み 思ひそわがする 大事に育てているのに、世間は騒がしい
4月13日:  春の雨は いや頻降るに 梅の花 いまだ咲くかなく いと若みかも 春に雨はよくふるのだが、花は未だ咲かない
4月12日:  黒木取り 草も刈りつつ 仕へめど 勤しき奴と 誉めむともあらず いくら尽くしても、何も誉めない
4月11日:  板葺の 黒木の屋根は 山近し 明日の日取りて 持ちて参ゐ来む 屋根を葺く板は、明日にとって来よう
4月10日:  言出しは 誰が言にあるか 小山田の 苗代水の 中よどにして 言い出したのは貴方なのに、会いに来ない
4月9日:  鶉鳴く 古りにし里ゆ 思へども 何ぞも妹に 逢ふよしもなき 古くから貴方を思っているのに合う機会がない
4月8日:  ひさかたの 雨の降る日を ただ独り 山辺に居れば いぶせかりけり 雨の日、1人山にいると心が晴れない
4月7日:  百年に 老舌出でて よよむとも 我れはいとはじ 恋ひは増すとも 百歳になっても、貴方をもっと恋してる
4月6日:  玉の緒を 沫緒に搓りて 結べらば ありて後にも 逢はざらめやも 関係をはっきりさせない方が、後で会える
4月5日:  神さぶと 不欲ぶにはあらね はたやはた かくして後に 寂しけむかも 今恋をしないと、後で寂しくなるだろうか
4月4日:  朝夕に 見む時さへや 我妹子が 見れど見ぬごと なほ恋しけむ 朝夕に会っても、会えば会うほど恋しくなる
4月3日:  夢の逢ひは 苦しかりけり おどろきて 掻き探れども 手にも触れねば 夢の中で会っても触れることが出来ない
4月2日:  月夜には 門に出で立ち 夕占問ひ 足占をぞせし 行かまくを欲り 貴方の所に行きたくて占っている
4月1日:  あしひきの 山にしをれば 風流なみ 我がするわざを とがめたまふな 優雅なことは出来ないが咎めないで欲しい




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