万葉集一日一首
  (2004年1月1日〜3月31日)

その日の歌を掲載しています。
凡そ、歌番号の若い方から掲載しています。
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日付 一口解釈
3月31日:  夜昼と いふわき知らず 我が恋ふる 心はけだし 夢に見えきや 私の恋する心が、貴方の夢に見えた?
3月30日:  千鳥鳴く 佐保の川門の 清き瀬を 馬うち渡し いつか通はむ 美しい川を渡ってあなたの元に通いたい
3月29日:  心には 思ひわたれど 縁を無み 外のみにして 嘆きぞ我がする 心ではいつも思っているが、きっかけがない
3月28日:  鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに 私は浮いた心で恋しているのではありません
3月27日:  夕闇は 路たづたづし 月待ちて 行ませ我が背子 その間にも見む 夕闇の道は不安だ、月明かりを待って欲しい
3月26日:  恋は今は あらじと我れは 思へるを いづくの恋ぞ つかみかかれる もう恋はないと思っていたが、又恋が襲って来た
3月25日:  恋草を 力車に 七車 積みて恋ふらく 我が心から 激しく恋しているのは、私の心からでたことだ
3月24日:  今は我は 死なむよ我が背 生けりとも 我れに依るべしと 言ふといはなくに 私は死にます、どうせ恋しいとは言ってくれない
3月23日:  月読の 光りは清く 照らせれど 惑へる心 思ひあへなくに 月の光は清らかでも、心が迷って訪れられない
3月22日:  月読の 光りに来ませ あしひきの 山来隔りて 遠からなくに 遠くはないので、この月の光で来て欲しい
3月21日:  恋ひ恋ひて 逢へる時だに うるはしき 言尽してよ 長くと思はば 会った時は嬉しい言葉を言い尽くして欲しい
3月20日:  汝をと我を 人そ放くなる いで我が君 人の中言 聞きこすなゆめ 私達の仲を人が離す、噂など気にしないで
3月19日:  あらかじめ 人言繁し かくしあらば しゑや我が背子 奥もいかにあらめ 今でもこんなに噂、アーこの先どうなるんだろう
3月18日:  思へども 験もなしと 知るものを 何かここだく 我が恋ひわたる 意味がないのに、私の恋は増して行く
3月17日:  思はじと 言ひてしものを はねず色の 移ろひやすき 我が心かも もう恋はしないと言ったのに・・変り安い私の心
3月16日:  我れのみぞ 君には恋ふる 我が背子が 恋ふと言ふことは 言のなぐさそ 私は貴方を恋しているが、貴方は違う
3月15日:  心には 忘るる日なく 思へども 人の言こそ 繁き君にあれ 私は毎日忘れないが、他人の噂の多い君だ
3月14日:  白栲の 袖別るべき 日を近み 心にむせひ 音のみし泣かゆ 別れが近くて、声を出して泣く毎日だ
3月13日:  今は我は わびぞしにける 息の緒に 思ひし君を ゆるさく思へば 私は今、悲しい気持ち一杯だ
3月12日:  世の中の 女にしあらば 我が渡る 痛背の川を 渡りかねめや 普通の人なら夫の浮気を我慢しても私は無理
3月11日:  沖辺行き 辺を行き今や 妹がため 我が漁れる 藻臥束鮒 愛する人のため、私は小さなフナを取った
3月10日:  松の葉に 月はゆつりぬ 黄葉の 過ぐれや君が 逢はぬ夜ぞ多き 待った挙句に、会わない夜が多くなった
3月9日:  なかなかに 黙もあらましを 何すとか 相見そめけむ 遂げざらまくに 黙ってればよかった、遂げる事は無理なので
3月8日:  今さらに 妹に逢はめやと 思へかも ここだ我が胸 いぶせくあるらむ 今更会えないので、こんなにも心が晴れない
3月7日:  あひ思はぬ 人を思ふは 大寺の 餓鬼のしりへに 額づくごとし 片思いの恋はつまらない
3月6日:  皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど 君をし思へば 寝ねかてぬかも 貴方を思うと寝ようにも寝れない
3月5日:  我れも思ふ 人もな忘れ おほなわに 浦吹く風の やむ時なかれ 私も思う、貴方も思って、風が止む時ないように
3月4日:  夕されば 物思ひまさる 見し人の 言とふ姿 面影にして 夕方は会った人の物をいう姿を思い出す
3月3日:  心ゆも 我は思はずき 山川も 隔たらなくに かく恋ひむとは こんなに恋するとは思ってもいなかった
3月2日:  家離り います我妹を 留めかね 山隠しつれ 心どもなし 留めること出来ず、私の気力はなくなった
3月1日:  あしひきの 山さへ光り 咲く花の 散りぬるごとき 我が大君かも 山は輝き、花が一度に散るように亡くなった
2月29日:  かくのみに ありけるものを 妹も我も 千歳のごとく 頼みたりけり 短い命なのに、千年も生きられる思っていた
2月28日:  妹が見し 屋前に花咲き 時は経ぬ わが泣く涙 いまだ干なくに 庭に花は咲いたが、私は未だ泣いている
2月27日:  出でて行く 道知らませば あらかじめ 妹を留めむ 関も置かましを 出てゆく道が判っていれば関所を置いたのに
2月26日:  時はしも 何時もあらむを 情いたく 去にし吾妹か 若子を置きて 今、亡くならなくても良いのに
2月25日:  うつせみの 世は常なしと 知るものを 秋風寒み 偲ひつるかも 秋風が寒いと亡き妻を思い出す
2月24日:  秋さらば 見つつ偲へと 妹が植ゑし 屋前の石竹 咲きにけるかも 秋になって亡き妻が植えた撫子が咲いた
2月23日:  長き夜を 独りや寝むと 君が言へば 過ぎにし人の 思ほゆらくに 貴方が独り寝と言うと、亡き人を思い出す
2月22日:  今よりは 秋風寒く 吹きなむを いかにか独り 長き夜を宿む これから、どうして秋の夜長を過ごそうか
2月21日:  留め得えぬ 命にしあれば 敷栲の 家ゆは出でて 雲隠りにき 貴方は家を出て、雲に隠れてしまった
2月20日:  若子の 這ひたもとほり 朝夕に 哭のみぞわが泣く 君無しにして 君がいないので泣いてばかりいる
2月19日:  かくのみに ありけるものを 萩の花 咲きてありやと 問ひし君はも 萩の花は咲いたかと私に問うた君だった
2月18日:  はしきやし 栄えし君の いましせば 昨日も今日も 吾を召さましを 生きていれば毎日私を呼んだろうに
2月17日:  妹として 二人作りし わが山斎は 木高く茂く なりにけるかも 妻と作った庭は木が大きくなった
2月16日:  妹と来し 敏馬の崎を かへるさに 独りして見れば 涙ぐましも 帰りは1人、1人で見ると涙が出てくる
2月15日:  磯の上に 根はふむろの木 見し人を いづらと問はば 語り告げむか 木に見た人を問う、木は答えるだろうか
2月14日:  鞆の浦の 礒のむろの木 見むごとに 相見し妹は 忘らえめやも 木を見る度に亡き妻を思い出す
2月13日:  わぎも子が 見し鞆の浦の むろの木は 常世にあれど 見し人ぞなき ハイネズの木を見た妻はもういない
2月12日:  何時しかと 待つらむ妹に 玉梓の 言だに告げず 往にし君かも 妻にも何も言わずに逝ってしまった
2月11日:  昨日こそ 君はありしか 思はぬに 浜松の上 雲とたなびく 貴方は今日、雲となって棚引いている
2月10日:  世間は 空しきものと あらむとぞ この照る月は 満ち欠けしける 月が満ち、欠ける。この世は空しい
2月9日:  都なる 荒れたる家に ひとり寝ば 旅にまさりて 苦しかるべし 都の荒れた家での1人寝は、旅より苦しい
2月8日:  帰るべく 時はなりけり 都にて 誰が手本をか 我が枕かむ 都に帰ってもあなたに代わる人はいない
2月7日:  みつみつし 久米の若子が い触れけむ 礒の草根の 枯れまく惜しも 有力な人が触った草が枯れるのは惜しい
2月6日:  風速の 美保の浦廻の 白つつじ 見れどもさぶし 亡き人思へば 亡き人思えば、浜のツツジ見ても寂しい
2月5日:  勝鹿の 真間の入江に うちなびく 玉藻刈りけむ 手児名し思ほゆ 玉の藻を刈ったという女性を思い出す
2月4日:  われも見つ 人にも告げむ 葛飾の 真間の手児名が 奥つき処 私も見た、お墓の場所を人に告げよう
2月3日:  やくもさす 出雲の児らが 黒髪は 吉野の川の 沖になづさふ 出雲から来た娘が水に浸かった
2月2日:  岩戸破る 手力もがも 手弱き女にし あれば術の知らなく 岩戸を破る力が欲しいが、私は女
2月1日:  豊国の 鏡の山の岩戸立て 隠りにけらし 待てど来まさず もういない?いつまで待っても来ないだろう
1月31日:  伊勢の海の 礒もとどろに 寄する波 かしこき人に 恋ひわたるかも 礒に寄せる波のように恋し続けています
1月30日:  恋にもそ 人は死にする 水無瀬河 下ゆわれ痩す 月に日に異に 恋の為私の心は日が経つ毎に痩せてゆく
1月29日:  八百日ゆく 浜の沙も 我が恋に あにまさらじか 沖つ島守 砂の数より私の恋が勝っている
1月28日:  我がやどの 夕蔭草の 白露の 消ぬがにもとな 思ほゆるかも 今にも消え入りそうにあなたを思う
1月27日:  君に恋ひ いたもすべなみ 奈良山の 小松が下に 立ち嘆くかも あなたを恋しているのに、手立てがない
1月26日:  我が思ひを 人に知るれか 玉匣 開きあけつと 夢にし見ゆる 私の貴方への思いが人に知れたのだろうか?
1月25日:  荒玉の 年の経ぬれば 今しはと ゆめよ我が背子 我が名告らすな 年が経っても私の名前は告げないで
1月24日:  衣手を うちみの里に あるわれを 知らにぞ人は 待てど来ずける 来なかったのは私を忘れたからでしょう
1月23日:  白鳥の 飛羽山松の 待ちつつぞ わが恋ひわたる この月ごろを あなたを恋し、待ちつづけるこの数ヶ月です
1月22日:  我が形見 見つつしのばせ 荒たまの 年の緒長く われも思はむ 何時までも私を思って、私も思おう
1月21日:  今よりは 城の山道は 不楽しけむ 我が通はむと 思ひしものを これからは、城の山道はさびしくなるだろう
1月20日:  ここにして 筑紫や何所 白雲の たなびく山の 方にしあるらし 筑紫は白雲のたなびく先にあるようだ
1月19日:  まそ鏡 見飽かぬ君に 遅れてや あした夕べに さびつつ居らむ 君に置いてきぼりにされ、朝夕さみしい
1月18日:  君がため 醸みし待酒 安の野に 独や飲まむ 友無しにして あなたの為に作ったお酒を、1人寂しく飲む
1月17日:  わが君は わけをば死ねと 思へかも 逢ふ夜逢はぬ夜 二つ走くらむ いったい私をどう思う?会う会わぬがよく変わる
1月16日:  この世には 人言繁し 来む世にも 逢はむ我が背子 今ならずとも この世では会えない、あの世で会いましょう
1月15日:  我が背子に 復は逢はじかと 思へばか 今朝の別れの すべなかりつる もう会わない、と決めた別れはつらかった
1月14日:  人言を 繁み言痛み 逢はざりき 心あるごと な思ひ 我が背子 噂があまりに激しいので会わなかった
1月13日:  言清く いたもな言ひそ 一日だに 君いし無くは 痛きかも むごいことをきっぱり言わないで、辛いから
1月12日:  庭に立つ 麻手刈り干し 布さらす 東女を 忘れたまふな 帰った後も、東方の女性を忘れないで欲しい
1月11日:  わが背子が 著せる衣の 針目落ちず 入りにけらしも わが情さへ 夫の服の糸目にも、私の心が入ってる
1月10日:  大原の この厳柴の いつしかと 我が思ふ妹に 今夜逢へるかも いつか会いたいと思っていた人に今夜会えた
1月9日:  わが背子は いづく行くらむ 奥つ藻の 名張の山を 今日か越ゆらむ 私の夫はどの辺を歩いているのだろう
1月8日:  今さらに 何をか思はむ うちなびき 情は君に よりにしものを 私の心はとうにあなたに寄り添っています
1月7日:  神風の 伊勢の浜荻 折り伏せて 旅寝やすらむ 荒き浜辺に 夫は旅先でゆっくり寝ているのであろうか
1月6日:  百重にも 来及かぬかもと 思へかも 君が使の 見れど飽かざらむ 会いたい人の使いは見て飽ないものだ
1月5日:  今のみの 行事にはあらず 古への 人そまさりて 哭にさへ泣きし 昔の人はもっと声に出して泣いた
1月4日:  一日こそ 人も待ちよき 長き日を かくのみ待たば ありかつましじ こんなに待たされては、生きて行けない
1月3日:  山の端に あぢ群騒き 行くなれど 我れは寂しゑ 君にしあらねば 鳴き騒ぐ鴨、あなたでないので寂しい
1月2日:  君待つと 我が恋ひをれば わが宿の 簾動かし 秋の風吹く あなたを待っていたら、代わりに風がやって来た
1月1日:  み熊野の 浦の浜木綿 百重なす 心は思へど 直に逢はぬかも 心では幾重にも思っているが、直ぐにはあえない




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